2012-08-23[n年前へ]
■大人のための自由研究 「7色/虹色のビール」を作ってみよう!?
広い世界には、色んな美味しいビールがあるようです。濁り成分がたくさん入ったヴァイツェンビール(白ビール)や、微細な泡が特徴の英国ギネスの黒ビール、そして、北海道は網走の「赤ビール(はまなす)」「緑ビール(知床)」「青ビール(流氷)」…毎日1種類ずつ飲んだとしても、すべてのビールを飲むことができないくらい、個性豊かなビールがたくさんあります。
せめて見た目だけでも「色んなビール」を飲んだ気になってみようと…今日は「色々・カラフルな7色/虹色のビール」を作ってみることにしました。やり方は、いたって単純実直で(つまりはちょっと反則な作り方)、本来は黄色く見えるビールに「食品用の着色料」をドボドボ突っ込めば、作りたい色のビールができるはず…というレシピです。
まずは、製菓に行き(手に入る限りの)すべての食用着色料を買ってきます。そして次は、酒屋に行き発泡酒(着色料が思ったより高く、研究予算が尽きたのです)を買いました。そして、試験管に「黄色いビール(本当は発泡酒…以下省略)+着色料」を注ぎ込み、ビールの泡が消えてしまうことも恐れずに・ひたすらビールと着色料をかき混ぜます。そういう風に、世界各国にあるだろう「色んな色のビール」を作ってみたのが下の写真、まさに虹色/7色のビールです。
ちなみに、一番左にあるのは「完全黒体な黒ビール」です。つまり、黒色(食用)着色料をドボドボ…ビールに混ぜ込んでみた「これぞ黒ビール」です。
ところで、「黄色い色を持つビールに、他の色を混ぜ合わせても、たとえば青色を混ぜ合わせても”青色”にはならないんじゃないの?」と思われる方もいると思います。「透明なビールに青色着色料を入れるのでないと、青いビールを作り出すことはできないのでは?」と思う人もいるはずです。確かに、黄色いビールに青色を混ぜても、完全な青色にはならないかもしれません。
しかし、思い出してみてください。新幹線のトイレ、黄色いオシッコに、それを流す出す青い水流が混ぜ合わさった時…その液体の色はどんな色でしょうか?そう「青色」ですね。薄い黄色の液体に他のどぎつい色をドボドボ突っ込んだ結果は、強烈に他色の液体ができあがる、というわけです。
…という「発想の素」を思い起こしつつ、(自分で作った)青色のビールを飲んでいると、何だか新幹線のトイレ洗浄用液体を飲んでいるような微妙なキモチになったりします。そしてまた、「完全黒体な真っ黒ビール」の「黒」は(世界のどこかにあるだろう美味しい)黒ビールとは全然別物の「色」、まったく別の飲み物だったのです。
2012-08-24[n年前へ]
■大人のための自由研究 「ビールの色」を調べてみよう!?
「大人のための自由研究 「7色/虹色のビール」を作ってみよう!?」でビールに色んな食用色素を混ぜ込んで、彩り鮮やかなカラフル・ビールを作ってみました。今日は「ビールの色」について調べてみることにします。
「ビールの色」を決めるやりかたのひとつにAmerican Society of Brewing Chemistsが決めた430nmの波長の光がビール中を通過する間に「どのくらい吸収されるか」で表すというものがあります。430nmということは「青色」ですから、それはつまり、「青色に相当する波長の光をどれだけ吸収するか」でビールの色を表すというわけです。
「青色の波長光が吸収された光はどのように見えるか」というと、それは「黄色」です。(色処理ライブラリを使って)「青色の波長光が吸収された光スペクトル」(左下図)をRGBに変換し、そのRGB色でビールジョッキ状の円筒形を描いてみると右下のようになります。こう眺めてみると、それは確かにビールの色にも見えてきます。
処理コード:
beerColor=(whiteLight[#]*(1-yellowFilter[#]))&; spectorPlot[beerColor] (* スペクトル図示 *) rgb = spectorFitting[ beerColor, redLight, greenLight, blueLight ];(* RGB近似 *) Graphics3D[{RGBColor[rgb], Opacity[0.6], Cylinder[]}]
2012-08-27[n年前へ]
■「カラービール」を飲める店
色んな色の7色ビールを(ビールに着色料を混ぜ合わせることで)作ってみたわけですが、(カラフルビールを探して)ググってみると、浜松「海鮮居酒屋えびかにたこいか」に行けば、「彩り鮮やかなカラービール」を飲むことができるようです。
その「カラー・ビール」のメニューを眺めるれば、「赤(ザクロ味)」「青(ブルーハワイ味)」「緑(ミント味)」「 黄(マンゴー味)」「紫(巨峰味)」「茶(チョコ味」…と書いてあります。これは一体どんな「ビール」なんでしょうか?
2012-12-08[n年前へ]
■「ビール・ピッチャー注ぎ」の科学 初等幾何学 偏
年も暮れ、忘年会のシーズンになりました。白い泡をかぶったビールがタップリ入ったピッチャーを持ち、ビールをジョッキに注ごうとピッチャーをグイッと傾けると、ピッチャー上部の泡ばかりがジョッキに注がれてしまいました。ピッチャーの上の方は泡だらけだからしょうがないか…と諦めていると、横からぐいっと手が伸び、ピッチャーを掴みました。
「違うんだ。ビールのピッチャーはゆっくり注げば、(泡じゃなくて)ビールが出てくるものなんだ。可能な限りゆっくり、上腕二頭筋がプルプル悲鳴をあげるくらいユックリ注げばいいんだ」
そう言った方がピッチャーをスローにゆっくり注ぐと、確かに泡でなくピッチャーからはビールがこぼれ落ちていきます。
「そんなバカな…!」と驚きながらピッチャーの中を眺めると、傾けたピッチャーの中で「ビールの上面は水平を保ち、その結果傾けたピッチャーの縁(へり)からこぼれ出している」にも関わらず、白い泡はその上面が全然水平ではなく(泡上面は)まるでピッチャーを傾ける前そのままの形を保っているのでした。「そんなバカな!?」の答は、この泡上面が(ビール上面と事なり)水平になっていない、というところにあったのです。
ピッチャーを速く傾けてしまうと、ビールが水平面を保つと同時に泡も同じように形を変えて、泡の上面も水平になってしまいます。その結果、ピッチャーからは(上部に位置する)泡だけがこぼれ出してきてしまいます(下図の①)。
しかし、上腕二頭筋が辛く叫び出すくらいゆっくりとした速度でピッチャーを傾けていくと、泡の表面(と表面近く)はまるでダイラタンシー流体を連想させるかのように動かず、泡表面は動かず・内部の泡だけが動く結果、ビールが注ぎ口から出てくる…というわけです(下図の②)。
参考:ダイラタンシー(英語:dilatancy)とは、ある種の混合物の示す、小さい剪断応力には液体のように振る舞うのに、大きい剪断応力には固体のように振る舞う性質である。この現象が起こる物体を「ダイラタント流体」あるいは「ダイラタンシー流体」という。
ダイラタンシー
「当たり前だけれど面白いこと」は、下図の「解説図」と書いた部分(右下部分ですね)にあるように、ピッチャーを傾けたとき、ピッチャーが傾くことで泡が(ビールにより)排除されてしまう部分の体積(A部)と、ピッチャーが傾くことで(ビールが移動してしまい)泡を吸い込む体積(B部)は等しい、ということです。
だから、泡の上部表面は粘度が高くなり動きづらい状態にすることさえできれば、(体積変化がないままでいられるので)泡の上部表面形状は変化しないままでも良い、ということになるわけです。
ビール(あるいは発泡酒)種の種類による差とか、注ぐスピードの臨界点とか、あるいは、注ぐ(傾ける)速度変化をさらに微妙に工夫するとか…そうした現象に対する実験や数値解析は面白そうです。粘性体シミュレーション屋さんは、レッツTRY!な例題かもしれませんね。
2014-01-08[n年前へ]
■「ギネスビールの下に沈む泡」をOpenFOAMで計算してみよう!?
ビールをグラスに注ぐと、「グラスの中の泡は上に浮かび上がっていく」のが普通に思えます。けれど、たとえば、ギネスビールをグラスに注ぐと、グラス中で泡が下へ下へと沈んでいくさま(ギネス・カスケード)を見ることができますし、実はギネス以外のビールや水ですら、そんな「下に沈んでいく泡」を見ることができます(参考:ギネスビール風「下に沈む泡」を作るコツ)。
ビールを心から愛してる知人が、フリーのシミュレーションソフトウェア(開発プラットフォーム)であるOpenFOAMを使って、「ギネスビールの下に沈む泡」 を(正月休みの自由研究として)シミュレーション計算していました。非圧縮流体ソルバとDEMのソルバを組み合わせた連成解析ソルバを、(使いたてなので)かなりの試行錯誤=時間を費やして、けれど「たった8行のC++コード」で書いて5分のCPUタイムを使って計算されていました。
計算はグラスの断面右半分です。白い球は直径60μm(1mmの100分の6)の泡、ビールの粘度を10cP(水の10倍)としてみました。グラス中央では泡は浮力によって上向きに移動しますが、ガラス面では下向きに移動しています。ギネスは真っ黒で中央の泡の動きがみえないため、人間の目には泡が下向きに移動しているように見えます。
以前、「ギネスビール風「下に沈む泡」を作るコツ」で紹介した、シミュレーションソフト FLUENT を使った「ギネスビールの泡は上がるか下がるか ?」では、「ギネスビールの下に沈む泡」の秘密をシミュレーション解析で解き明かしつつ、こんな風に書いています。
古来, 人類は不可解な自然現象 に悩まされてきました. 由緒ある黒 ビール 「ギネス」 の泡がグラスの中 で下降しているように見えるのはな ぜだろう ? この現象は泡の物理的特 性に反するのでは ? ―― この単純 な疑問は, 何世紀もの間, 哲学者 や理論家達の論議の的となりながら も, 答えはみつからないままでした. しかし,数値流体力学 (CFD) により, 絶対的で信頼できる答えが導き出さ れました. 泡は上昇すると同時に下降していたのです.
こんなカッコ良すぎる「いいセリフ」に書かれているような「何世紀もの謎を解き明かす作業」を、自分の意志で自由に使うことができる時間や道具の範囲で、つまりは「自由研究」でできる…って凄くいいな!と思います。