2008-11-07[n年前へ]
■斜め下45度から眺める「フェルメール展」
東京都美術館で「フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち」が今夏から、12月14日まで開催されている。フェルメール展に行った時にこんなことを考えた。
(展示されている)フェルメールの絵を普通に眺めていると、絵そのもののせいか、あるいは、照明との位置関係のせいか、まるで、綺麗な画集を眺めているような気がする。それを逆に言ってしまえば、画集を眺めているのと変わりない、写真撮影した等身大の絵を眺めているのと変わりない・・・ということになってしまう。
けれど、絵の周囲を覆う手すりくらいの高さにかがみ、絵を少しづつ違う方向から眺めてみると、照明を反射し光る表面を通じて、絵の表面の凹凸が見えてくる。絵の中のどんな色の部分が出っ張っていて、どんな部分が凹んでいるのかが見えてくる。
つまり、絵がどのように描かれているか・フェルメールがどのように絵を描いていたのかが、朧気ながら見えてくる。灰色・人肌じみた色でキャンパス全体が塗られ、その上に薄めの色と淡い黒が塗られ、その上にさらに荒い黒と白が描かれているような感じが見えてくる。下地やモデリングやグレージング、そして、その上に画家が描いたハイライトと濃い黒い領域が見えてくる。
「絵が描かれた手順・方法」に興味を持つタイプの人は、レゾネと違う絵を見てみたい人は、フェルメール展を斜め下45度から眺めると面白いと思う。正面から見ると同じ黒が違う黒に見えてきたりと、少し違う立体的な絵が見えてきて面白いと思う。そして、立体的な景色から、その絵が描かれた時の空気が流れてくるように感じると思う。
2009-01-04[n年前へ]
■釣り用(偏光)サングラスを美術館に持って行く!?
光が物体を照らすとき、その表面(空気と物体の間)で反射する光は(反射面に平行な偏光方向である)S偏光の割合がとても高い。たとえば、太陽の光が水面を斜めに照らす時、水面で反射する光のほとんどはS偏光である。だから、日に照らされて輝く海面を目の前にした時でも、偏光サングラスをかければ、海の中を泳ぎ回る魚や海草をとても綺麗に見ることができる。
下の動画は紙面上に見える反射光を、偏光フィルタを通して眺めると、偏光フィルタの方向によっては「反射光が消えて画像が色鮮やかに見える」さまを確認してみたものだ。
たまに、ガラスに覆われた名画を目の前にしたとき、「あぁ、偏光サングラスを持ってくれば良かった」と思うことがある。絵画を覆うガラス面に写り込んだ照明を邪魔に感じるとき、邪魔な反射光を偏光フィルタで取り除きたくなる。しかし、そう思いつつも、いつもサングラスを持参することを忘れてしまう。
もしも、釣り用(偏光)サングラスをかけて美術館に行って、ガラスに包まれた名画を見たらどんな風に見えるだろうか。ガラス表面で反射する邪魔な光を消すことができるだろうか。あるいは、それとともに画家のマチエールも見えなくなってしまうのだろうか。
2009-03-23[n年前へ]
■さまざまな「照らし方」に切り替えることができる「美術館の照明」
さまざまな「照らし方」に切り替えることができる、「美術館の照明」が欲しいと感じることがあります。光がまんべんなく当たった絵や彫刻を見たいと思うときもありますし、とても陰影の強くマチエールやダイナミックな彫刻の形がはっきりと浮かび上がって見えるような絵画や像を見たいと感じることもあるのです。
また、穏やかな気分で見たいと思う時もあれば、作者の感情・勢いを感じてみたいと思う時もある。
そして、部屋が朝日に照らされ始めたかのように見える照明の中で眺めたいと思うこともあるし、穏やかな夕日で赤く沈むような色調の色とともに絵画を眺めたい、と思ったりもすることもある。
絵や彫刻を眺める人の視点(や身長)にあった、眺める人が何を見たいのかに応じた、時にはその時の気分に沿った、、さまざまな「照らし方」に切り替えることができる「美術館の照明」が欲しい。
2009-11-08[n年前へ]
■川面の上をゆっくり歩く
通りからは見えない川があった。川を挟む2本の道沿いは家がすべて面していて、そんな家々の下を綺麗な水がゆっくりと滑らかに流れてる。そして、その水面には青空と白雲と、そして、緑の木々が写り込んでいる。水面に映る青空は、頭上の空より遥かに青く、木々の緑も水面を通して眺めると、より強く見える。
水面はさざめき、それはまるで印象派の絵画を見ているようだ。鮮やかな絵の具を素早く走らせたような、そんなマチエールを感じる。不思議なくらい、印象派絵画を思い起こさせる。
川面の上には、小路が作られていて、流れる川の上を歩くことができる。時には、その川を見下ろすようなテラスがあって、ランチを食べている人々もいる。日差しを木陰で遮り、その下で飲むワインは、きっととても美味しいに違いない。
(この町に)実家があるんだ。水がきれいでね。この町に来たら、川面を歩いてみたり、時には川の水に足を少し浸してみる、のがお勧めです。そういう場所が、たくさんあります。
万城目学 「プリンセス・トヨトミ」