2009-06-01[n年前へ]
■表に出すもの、内に秘めるものの割合
北村薫の「夜の蝉 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書) 」から。
水鳥の脚使いではありませんが、内に何かを秘めない人はいません。何をどれぐらい表にし裏にするかは人によって違います。どんなにしてもいえないことというのは誰にでもあるのです。・・・ある意味では、その割合こそが、動かしようのないその人らしさを作るのでしょう。
「6月の花嫁」
2009-06-30[n年前へ]
■有限要素法を理解するには、プログラムリストが最も適切な表現手段である
20年前に出版された(今ではミステリ作家として有名な)森博嗣の「C言語による有限要素法入門 」から。(ちなみに森博嗣には「C言語によるマトリックス演算 」という著書もある)
本書は、有限要素法をC言語で実行することはもちろんだが、むしろ、C言語によって有限要素法を理解する目的に適している。有限要素法を理解するには、プログラムリストが最も適切な表現手段であるからであり、C言語のリストは、目に優しい端正なコーディングが可能である。
1989年1月 森博嗣
2009-07-08[n年前へ]
■自分の「掌(てのひら)の中」にあるもの
加納朋子の素敵なミステリ「掌の中の小鳥 (創元推理文庫) 」から。
(ひとりの子供が)「手の中に一羽の小鳥を隠し持って行って、賢者にこう言うんだ。『手の中の小鳥は生きているか、死んでいるか?』って。もし賢者が『生きている』と答えれば、子供は小鳥を握りつぶす。『死んでいる』と答えれば、小鳥は次の瞬間には空高く舞い上がるってわけさ。
-手の中の小鳥は生きている?それとも死んでいる?
賢者はこう言ったんだ。『幼き者よ。答えは汝(なんじ)の手の中にある』ってね。
あなたの手の中には何もないかもしれないし、逆に何だってあるかもしれない。小鳥はもう死んでいるかもしれないし、生きているかもしれない。
あなたがどんな人間なのか、決めるのはあなた自身なのよ。
2009-09-27[n年前へ]
■、私たちの日常にひそむささいだけれど不可思議な謎
北村薫のデビュー作、「空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書) 」の冒頭に宮部みゆきが書いた紹介文から。
ヒロインの「私」と探偵役の噺家 春桜亭円紫師匠とのやりとりを通して、私たちの日常にひそむささいだけれど不可思議な謎の中に、貴重な人生の輝きや生きてゆくことの哀しみが隠されていることを教えてくれる。そして、「解説」で引用される北村薫が単行本で書いた言葉が、次の一文。
”小説が書かれ読まれるのは、人生がただ一度であることへの抗議からだと思います”
2009-12-31[n年前へ]
■天馬空を行く
北村薫のデビュー作「空飛ぶ馬 」の最終段から。
人は誰も、それぞれの人生という馬を駆る。
蛇足、という言葉を体現・具現化してしまうのなら、さらに、もうひとつ文を書き写してみるのなら、短編集である「空飛ぶ馬」の最後を飾る「空飛ぶ馬」の冒頭近くから、この一節をも書いてみることにしよう。せっかくの、年を越す大晦日の夜なのだから。
天馬空を行く。自由闊達(かったつ)の譬(たと)えだが、そのイメージには暗い物語の最後に救いをもたらす大きさがあるような気がした。
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