2008-07-19[n年前へ]
■エクセルでシミュレーション Vol.2 [静電界計算の動画 編]
エクセルでシミュレーション Vol.1 [静電界準備 編]で、(ポワソン方程式で表わされる)静電場の計算をエクセルでする準備作業ができたので、実際にエクセルで静電界計算をしてみました。どのような状態を計算してみたかというと、「夏の空に帯電した雲が生じた時の、地面から空へ向かう空間の断面の電場」の状態です。地面をグラウンド=0Vとして、空に電荷を帯びた雲が浮かんでいる状態を計算してみました。エクセルを使って、その計算シミュレーションをゼロから作り上げ、結果を描き終わるまでの8分弱の動画が下のものになります。また、mpeg形式の動画ファイル(65MB)もここに置いておきます。
夏の雷雲は負の電荷を帯びていることが多い、といいます。上のシミュレーション条件では、(動画を見ればわかるように、式後半に正電荷を入れましたから)雲の部分に正電荷を帯びさせましたが、そこは正負をひっくり返せば良いだけです。夏の日、暑い午後、都会や田舎の空に雷雲が見えてきたら、そのときの電場シミュレーションを(突然の落雷による停電に気をつけながら)PCのエクセル上でしてみるのも、気分転換になるかもしれません。
2008-07-20[n年前へ]
■エクセルでシミュレーション Vol.3 [夏の午後の雷雲の下 編]
エクセルでシミュレーション Vol.2 [静電界計算の動画 編]で、「地面と空に浮かぶ雷雲」を含む世界の静電場計算を行うエクセルシートを作ってみました(あくまで2次元ですが)。そこで、前回とは少しだけ違う”いかにも夏らしい”2つの例を計算してみました。
まず最初の計算は、地面の上に人が立っている状態です。空を見上げると、頭の上には雷雲が広がっていて、いかにも不安を感じている状態です。
計算結果を見ればわかるように、人体部分に電界が集中していて、すぐにもカミナリに打たれてしまいそうなことがわかります。
これは怖すぎる……というわけで、人の少し横に避雷針を立ててみたのが、次の例になります。高さのスケールが少し変に見えますが、そこら辺は適当に無視しておいて下さい。とにかく、人の少し横に避雷針を立ててみたわけです。
すると、今度は避雷針の先には強い電界が集中していますが、人がいる部分ではほとんど電位変化がないことがわかります。ということは、カミナリに打たれる心配もなく(といっても近くに落ちるカミナリはやはり怖いですけれど)安心していられる……ということがわかるわけです。
そういえば、もう夏ですね。日差しを強く感じる暑い午後に空を見上げると、いつも白い積乱雲が見えます。暑い夏を楽しみつつも、夏バテにはお気をつけください。
2011-12-30[n年前へ]
■10万分の1秒で眺める「一瞬の水滴」
「ゆがんだ形の水滴が作る虹をシミュレーションしてみた」という論文(PDF)が数ヶ月前話題になりました。虹を作り出すのは空気中の水滴ですが、そういった水滴は完全な球というわけではありませんから、そういったゆがんだ形の水滴が作る虹をシミュレーションしてみました、という研究です。そして、ゆがんだ形の水滴が作る、ゆがんだ形の虹が再現された、というわけです。
空気中にただよう水滴は、基本的に重力で下に落ちようとしているわけですから、水滴の下面から空気抵抗を受けひしゃげた形になります。今日は、そんな空気中を落ちていく水滴の形を眺めようと、蛇口の水が水滴へと変化していくようすをコンパクトデジカメで撮影してみました。それが右の写真です。撮影シャッタースピードを10万分の1秒に強制設定し(CHDK)、水滴に向かって「はい、チーズ!」とやってみた記念写真です。ひしゃげた形の水滴が、ガラス細工か水飴(みずあめ)であるかのように柔らかく映っています。
空には、虹だけでなくたくさんのものが浮かんでいます。いつか、空へたくさんの経路を作り・広がり・突き抜けていく雷でも撮影したいものです。
2013-01-25[n年前へ]
■巨大な「落雷が作り出すガラス細工(閃電岩)」を探してきました。
「超手動検索エンジンぐるぐる」を再開しました。すると、検索アドレスにこんな依頼が飛び込んできました。
「メラニーは行く!(Sweet home Alabama)」という映画を見ました。「雷」が重要なアイテムになっている映画です。映画中で「雷が落ちた砂漠の砂が融け・ガラス化した樹木状のもの」が美しくてとても印象でした。
ルシャトリエライト (lechatelierite) と呼ばれるものらしいのですが、検索で引っかかるのは数 cm 程度の大きさで、透明でもなく何だか山芋みたいなものばかりです。もしも大きなルシャトリエライトがあるなら見てみたい!というわけで、探して下さい。
砂上に雷が落ちたとき、落雷による電流が落雷地点を中心として砂中に流れ、ジュール熱が発生します。その熱が砂を溶かし、雷の経路形状のガラス細工を作り出します。
雷が地面に落ちると、落雷による電流はリヒテンベルク図形と呼ばれる、線香花火のように周囲に広がるような形を描き出します。周囲に大きく広がっていくということは、そこに流れる電流量は少なくなります。電流量が少なくなるということは発熱量が少なくなるということなので、落雷地点から少し離れると、砂が溶けガラス細工を形作るということはなくなります。
つまり、地面に落ちた雷が比較的均質に広がる限り、巨大なルシャトリエライトは生じえない、というわけです。(雷が持つエネルギー量と落雷地点での電流分布を考えれば、ルシャトリエライトの典型的な大きさは導くことができそうですね)
けれど、世の中には不均質が満ちていたりもしますから、地面に落ちた雷があまりど広がらないまま砂中を流れたりもします。そんな時には、大きなルシャトリエライトができるはずです。
というわけで、「超手動検索エンジンぐるぐる」が検索の旅から帰ってきました。ぐるぐるが持ち帰ってきた検索結果は、こんな具合です。
1996年、フロリダのキャンプ・ブランディングで作られた「世界で一番大きなルシャトリエライト(1999年調べ)」は、全長5.2メートルほどの大きさです(参考: LIGHTNING MAKES GLASS)。これは、ちょっと”巨大”ですよね?…とはいえ、世界は広いので、もしかしたら、巨大で透明なlechatelieriteが地球上のどこかには(あるいは宇宙のどこかには)存在しているかもしれません。
ぐるぐるは、透明なlechatelieriteに出会うことはなかったようです。「透明」ということは屈折率が極めて均一だということです。しかし、lechatelieriteの生成過程からすれば、lechatelieriteはそのような均質な状態にはならず、白~灰黒色にならざるを得ないのではないでしょうか。
というわけで、「超手動検索エンジンぐるぐる」を再開しました。もしも、調べたいこと・知りたいこと・手に入れたいこと…そんなことがあったなら、jun@hirax.netまで教えて頂ければ幸いです。